マンションの水回り移動は「できる場合」と「できない場合」がある
マンションで水回り移動が難しいと言われる理由
戸建てと違い、マンションは以下のような制約が多くあります。
- 構造体(梁・柱・スラブ) を勝手に壊せない
- 排水管・給水管などの 共用部分 に勝手に手を入れられない
- 管理規約・工事規程 で、水回りの大幅な移動が制限されていることがある
- 下の階・隣戸への 音・振動・漏水リスク がシビアに問題になる
そのため、「図面上はなんとなく行けそう」に見えても、構造・設備・管理の三つの観点でNGになるケースが少なくありません。
水回り移動の可否を決める5つのチェックポイント
簡単にまとめると、次の5つが「マンション水回り移動の限界」を決めます。
- 排水勾配が取れるか(自然流下で水が流れるななめの角度)
- 床下の高さ・二重床かどうか(配管を通すための空間があるか)
- 排水竪管(縦の管)の位置(どこまで離れられるか)
- スラブが部分的に下がっていないか(床に段差がなくても床下で段差になってないか)
- 管理規約・管理組合の工事ルール(そもそも許可される工事なのか)
この5つのバランスで、「ちょっと動かすのはOK」「トイレだけは無理」「フルスケルトンならここまでできる」などの判断が変わってきます。
先に知っておきたい「絶対やってはいけないパターン」
次のような工事は、構造・法令・管理規約の面からほぼアウトです。
- 梁やスラブに、勝手に大きな穴をあけて配管を通す
- 共用の排水竪管を、無断で切り回したりサイズを変える
- 管理組合に未申請で工事 をする
- 防火区画(玄関まわり・PS周りなど)を許可なく壊してしまう
ここを避けるだけでも、トラブルのリスクはかなり下げられます。
水回り移動で一番大事な「排水勾配」と「配管ルート」
排水勾配って何?なぜ限界を決めるのか
排水は基本的に 自然流下(重力まかせ) です。
そのため、配管には「わずかなななめ」が必要になります。これが排水勾配です。
- 50mm前後の配管であれば、
おおよそ 1/50〜1/100 程度の勾配(1mで1〜2cmほどの高低差)が必要 - 距離が伸びるほど、必要な高低差=床の厚みや段差 が大きくなる
「キッチンを今より3m遠くに」などと考えると、
その分だけ床を上げないと勾配が取れず、廊下やリビングに段差が生まれることがあります。
キッチン・洗面・浴室・トイレで違う排水のルール
排水は大きく 汚水(トイレ) と 雑排水(キッチン・洗面・浴室など) に分かれます。
- トイレ(汚水)は管径も大きく、流れが悪いとすぐ詰まりやすい
- キッチンは油汚れが多く、長距離になると配管内に汚れが溜まりやすい
- 洗面・浴室は髪の毛・石けんカスが溜まるので、掃除・点検性 が重要
特に トイレの排水移動 は、勾配・管径・配管ルートの制約が厳しく、
「同じ縦管周りで少しずらす程度はOKだが、間取りの端まで動かすのはNG」というマンションも多いです。
床上げ・二重床でどこまでカバーできる?段差と天井高さの問題
排水勾配を確保するために、床を一段上げて配管スペースを作る 方法があります。
- メリット
- 配管の通り道が増え、移動の自由度が上がる
- 将来の点検・補修もしやすくなる場合がある
- デメリット
- 室内に 段差 が生まれやすい
- 天井高さが低くなり、圧迫感が出ることがある
バリアフリーや、将来の暮らしやすさを考えると、
「段差が増えすぎる床上げ」は、慎重に検討した方が安心です。
電気・ガス設備との取り合いもセットで考える
水回りを動かすときは、電気・ガス のことも一緒に考える必要があります。
- ガスコンロを移動する場合、ガス管の延長範囲や配管ルートに制限がある
- 制限が厳しい場合は、IHコンロに変更 した方が現実的なことも
- 洗面・浴室まわりのコンセントは、感電防止のためのゾーニングがあり、
防水コンセント・アース付きコンセント など基準に沿った設計が必要
このあたりは、建築+設備の両方に慣れている設計者 に一度チェックしてもらうと安心です。
将来のメンテナンスや詰まりやすさも事前に考えておく
配管を遠くまで引き回すほど、
- 曲がり(エルボ)が増える
- 管内が汚れやすい
- 詰まりの際に、掃除しづらい場所が増える
といったデメリットも増えていきます。
「今だけ使えればOK」ではなく、
10年後・20年後に詰まりやすくないか、点検口はあるか までセットで考えてもらえる業者にお願いしたいところです。
水漏れや詰まりのトラブル全般については、見積もりや業者選びの考え方をまとめた
👉 後悔しないリフォームは「相談相手」で決まる|ねこリノ相談教室
もあわせて読んでおくと安心です。(ねこリノ相談教室)
プロに相談するときのポイントと窓口の選び方
水回り移動が伴うマンションリフォームでは、
- マンションリノベの実績がある
- 管理組合とのやり取りに慣れている
- 構造・設備の制約を前提にプランを考えてくれる
こうした業者・相談先を選ぶことが大切です。
ねこリノ相談教室では、図面や見積もりを一緒に見ながら、
「このマンションで何ができて、何が厳しそうか」を一緒に整理するお手伝いもしています。
👉 教室長ってどんな人?|ねこリノ相談教室 (note(ノート))
どこまで動かす?パターン別の現実的な落としどころ
※費用はあくまで「傾向」の話で、実際には物件条件・仕様・エリアで大きく変わります。
キッチンだけ位置をずらすケース
よくあるのは、
- 壁付けキッチン → 対面キッチン へ
- リビング側へ少し張り出した ペニンシュラ型 へ
- 同じ面内での位置を1〜2mずらす
といったケースです。
- 同じ排水竪管を使える範囲であれば、
床上げを最小限に抑えつつ計画できる ことも多いです。 - ただし、アイランドキッチンなどで排水を中央に持ってくる場合は、
リビング全体を床上げして、フラットな床の中に配管を隠す こともあります。
洗面・洗濯機をまとめて動かすケース
家事動線を良くするために、
- 洗濯機を脱衣室の中に入れたい
- 玄関近くに ただいま手洗いコーナー を作りたい
といったご要望も増えています。
- 洗濯機には床排水があるため、排水ルートの確保が最優先
- できれば、点検・清掃がしやすいように、
洗濯パンの下に配管を詰め込みすぎない 計画が理想です。
トイレ・浴室まで大きく動かす「フルリノベ」ケース
スケルトンリノベーションで、間取りをガラっと変える場合、
- トイレ・浴室の位置変更も同時に検討
- ただし、排水竪管の位置から大きく離すのはかなりハードルが高い
になることが多いです。
国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」でも、
共用部分を含めた改修の考え方や、長期修繕と合わせた計画の重要性が示されています。(国土交通省)
やりたいことと予算・規約のバランスの取り方
水回り移動は、どうしても
- 解体・配管・防水などで コストがかさみやすい
- 物件・管理規約によって 「できること」に限界がある
という性質があります。
そのため、
- 「絶対に外せない希望」
- 「できれば叶えたい希望」
- 「条件が厳しければあきらめてもよいこと」
の三段階くらいで 優先順位を決めておく と、
打ち合わせがとてもスムーズになります。
マンション水回り移動で後悔しないためのチェック項目
打ち合わせ時に業者へ必ず聞いておきたい質問
- 「排水勾配はどのように確保しますか?」
- 「床上げはどこからどこまで、何cm上がりますか?」
- 「点検口はどこに付きますか? 将来の掃除はどうしますか?」
- 「万が一、工事が原因で漏水した場合の対応・保険は?」
こうした質問に対して、図面や仕様書を使いながら
分かりやすく説明してくれるかどうか が、業者選びの大きな判断材料になります。
ねこリノ相談教室に相談いただく場合の流れ(ご案内)
「業者さんはこう言っているけれど、本当に大丈夫?」
「自分のマンションで、水回り移動はどこまで現実的?」
そんなモヤモヤを感じたときは、第三者の建築士 に一度整理してもらうのも手です。
ねこリノ相談教室では、
- 不安や疑問をヒアリング
- 図面・見積・写真を共有いただく
- オンラインでポイントを解説
- 必要に応じて、業者さんへの確認ポイントを整理
という流れでサポートしています。
詳しくは、こちらのフォームからお気軽にご相談ください。
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あわせて、「リフォーム全般で損をしないための考え方」を知りたい方は、
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おまけ:公的な相談窓口・情報も活用しよう
マンションの水回り移動に限らず、リフォーム全般について不安があるときは、
公的な情報や相談窓口も上手に使うと安心です。
- 国土交通省「リフォームをお考えの消費者の方」
👉 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/reform/consumer.html (国土交通省) - 公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」
👉 https://www.chord.or.jp/ (chord.or.jp)
「業者さんに直接は聞きにくい…」という内容も、
こうした窓口なら中立の立場でアドバイスしてくれるので、
ねこリノ相談教室とうまく組み合わせて使っていただければと思います。

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